表具店・横川伯鳳堂は島根県安来市で西陣金襽を使い掛け軸(掛軸)や古書画の仕立て直し、修復、しみ抜き、表装、表具、時代表装をしています。

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横川伯鳳堂

二層紙と表具師の良心

2009年5月3日

画仙紙の二層紙について

書画用の画仙紙には、 単層紙 と呼ばれる一枚漉きの紙がよく使用されています。    

また、 宣紙を2枚重ねて漉いた厚く腰の強い紙で 二層紙 ともよばれる紙があります。

 

この 層紙は筆圧をかけて書く人や、ゆっくり書く人には、好まれて使用されます。

表装する場合に単層紙には問題ありませんが、二層紙は希に 浮き と言う現象が起こることがあります。この 浮き が発生すると、そのままでは表装することができません。

 

そこで、二層紙を あい剥ぎ (二枚に剥がすこと)する必要があります。しかし、 浮き の部分があっても二層紙はそう簡単には二枚に剥がすことができません。表具師は細心の注意を払い、 あい剥ぎ 作業を行います。

*二層紙をはがしている写真
二層紙をはがしている写真
*右が表、左が剥がした裏の写真
右が表、左が剥がした裏の写真

こうして二層紙を あい剥ぎ したものがこの写真です。

このように 層紙は あい剥ぎ することができます。しかし、印譜や文字のかすれ部分は裏には写っていません。つまり、表と裏で同じものが二枚になるわけではないのです。

 

 
*二層紙を剥がしたあとの表の紙と裏の紙の拡大した写真
二層紙を剥がしたあとの表の紙と裏の紙の拡大した写真

「富岡鉄斎先生などの作品は二枚に剥げ、二つの作品ができる」などの噂は、作品の剥がされた裏側が加筆されて、世の中に出回ったのではないでしょうか。小手先だの心無い一部の表具師が悪事にかかわったのでしょう。

 

「紙本ならどんな作品でも二枚に剥がせる」と吹聴する方もいますが、画仙紙ならなんでも剥がせると言うわけでなく二層紙、三層紙が剥ぐことができるのです。

 

私は二層紙を剥がすことなど、そう大した技術ではないと考えます。何よりも、二層紙を剥がした裏側を本物の作品として世に出すなど許されないことです。

 

作品によっては二層紙を剥がすと、絵の具や墨色が薄くなり、迫力を損ねる作品もあります。不必要に二層紙を剥がすことはありません。横川伯鳳堂では、剥がした作品の裏側は、お客様に必ずお返しいたします

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