小早川秋聲「観音図」絹本に発生したカビ抜き
2011年11月20日
カビの染抜きの中で絹本に発生したカビは非常に落としにくいモノです。
カビの発生した観音図部分
これは絹本に書かれた観音図です。絹本全体に多量のカビが発生しています。
紙本に比べ、絹本のカビは除去が困難です。
彩色画の場合、絵具を剥落させることなくカビだけを抜く作業となります。
この観音様のカビは、発生してから時間が経過していて絹の繊維の奥深くまでカビが浸食していてとても難しいカビの染抜きです。
背景や観音様の光背だけでなく、胡粉で描かれた衣にもカビが発生しています。
カビの原因を列記すると、
・掛け軸の保管に適していない保管場所
・古糊の質
・仕事の手抜き
・使用する紙の保管条件
・展示場所の条件の悪さ
・湿気を帯びたままの箱への収納
・定期的な虫干しの不履行
これ以外にも様々な原因が考えられますし、カビにも白、赤、黒、茶など種類があります。
カビ染抜きの部分比較写真
絹本に胡粉で描かれたモノは剥落しやすく、慎重に作業を進めました。
絹本全体のカビを除去でき、胡粉で描かれた花弁の中にあったカビも除去しています。
これだけ多くのカビが発生してからの時間経過もあり、カビ抜き作業は短期間では、なかなか取れません。お客様が早い納期を希望され十分な作業時間がありませんでした。
染抜きに2カ月以上掛け作業しましたが作業時間が足りず、完璧にはカビが除去できていません。
下の拡大写真をご覧いただくと、首周りと衣部分に僅かにカビの染みが残っています。
絹本に極彩色で描かれた作品のカビの染抜きは、とても難しく根気のいる作業です。
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