谷角日沙春画伯の美人画 絹本のカビ抜き
2012年6月10日
絹本に発生したカビの染抜き例
兵庫県生まれの谷角日沙春画伯の「菊花美人」図の絹本全面の星カビ抜きです。
美人画を一貫して描いた画伯ならではの彩色豊かな作品です。
カビ抜き修復前の作品
この作品のようなカビ染みは、発生してから長期間経過しています。
作品を描かれた当時の綺麗な状態にするには、染抜きも時間を掛けて行います。
極彩色の作品を損傷させぬようシミ抜き前に、 胡粉や 絵の具 すべてに定着作業を丹念に行います。
印譜の朱肉も描かれてからの時間経過で朱肉が流失しやすく、染抜きするには確かな定着と細心の注意が必須です。
落款と印譜の拡大比較。部分
このように絵具や本紙を傷めることなく、カビを除去するには濃度は極薄く、作品に安心な薬材を使います。
作品の状態を見ながら時間を掛け、染抜き作業をおこないます。
また、何度も繰り返す煤抜き作業工程中も、再度定着作業を行う必要があります。
カビ染抜き修復後に、経年からの絹焼けを取り除くため、全面漂泊しています。
拡大比較部分。
拡大写真(カビ抜き前、後)
煤抜き費用を押える為に、絹本を傷める薬品や濃い濃度の薬品を使い短時間に染抜きすると、必ず絵具の流失が起こり、本紙も傷めます。
この作品の染抜きには、作業開始から2週間以上掛かりました。
この修復作品の掲載の許可を戴きました、鳥取市の画廊主人。S様、誠に有難うございました。
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