表具店・横川伯鳳堂は島根県安来市で西陣金襽を使い掛け軸(掛軸)や古書画の仕立て直し、修復、しみ抜き、表装、表具、時代表装をしています。

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東洋大学初代学長 井上圓了先生 一行書の修復

東洋大学創設のため、井上圓了先生が山陰へ歴訪し揮毫をされた一行書です。
東洋大学初代学長 井上圓了先生 一行書の修復

東洋大学出身のお客様で、井上圓了先生のお軸修復をご依頼頂きました。

作品をよく観察すると、本紙の上下に表具が捲れた部分に糊付けして汚れた跡がありました。
また数か所に本紙の折れもありました。

拡大した部分が糊付けで汚れた部分です。

一行書の本紙の下部に余白が少なく、書が詰まった感じがありました。

井上圓了先生「一行書」

お客様とこの書についてお話する中で、東洋大学の専門家に調べていただけるとお聞きし、お客様にお願い致しました。以下の文章は安来市のE・S様にお願いし、詳しく調べて頂いたものです。

井上円了  
1858.03 .18( 安政5年2月4日)年越後国(新潟県)浄土真宗大谷派慈光寺の長男として誕生。幼名は岸丸、のちに襲常(しゅうじょう)、得度して円了と改名した。号は甫水(ほすい)。東京大学哲学科を卒業。1887年9月・哲学館(東洋大学の前身)を創立。

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         井上円了先生染筆書解説

大正六年関印

翻  字  : 心誠則不祷而神自護   甫水 円了道人書
書き下し文:心誠なれば、則(すなわ)ち祷(祈)らずして、神自ずから護らん。

大  意  :本当に自分の心が誠であれば、(特別に強く)神に祈らなくても神は

        自らを守ってくれるでしょう。

若干の解説:この一行書は、同封した大正5年関防印のある同一書が掛け軸となって東洋大学に所蔵しております。またこれと同じ感触(センス)で次の句をよく書かれています。 

①心誠則萬福不招而集于家門   大正元年
 心誠なればすなわち萬福招かずして家門に集まらん
 本当に誠の心があるならば、多くの幸福が特に呼び寄せようとしなくて
 も自然に家の中に集まってくるでしょう。

②心誠則萬福不招而自来集 大正2年
 心誠なれば即ち萬福招かずして自ずから来たり集まらん
 本当に誠の心があるならば、多くの幸福が特に呼び寄せようとしなくて集まり
 来るでしょう。

 以上の2例のように上の句もほぼ同じ誠実な心の持ち主には
 生前に幸福がやってくる、と書かれています。

(追加) 解説はここまでで充分かと思いますが、少しだけ余計なことを書き
ます。円了先生は若いとき読まれた中国の思想家の書物の中から、ご自分も共鳴
し、また後の人にも聞かせたい格言集をノートに取り、何時も手元に置き、
旅の中でも懐にいれていました。例えば、「心誠則・・・」という格言を先生は
どのような先人の言葉から引用したのかといえば、中国古代の思想家で、儒教と
いう教えを説いた孔子の言葉に

 「(孔)子、怪力乱神を語らず」
という一説があります。怪力乱神とは何か、このことだけでも、中国、日本の多
くの学者が論争していますが、普通に、怪は怪異、力は異常な力、乱は背徳・反
乱、神は鬼神のことで、死んだ先祖の霊や人間以外の神などをいうといわれてい
ます。特に神については、孔子が語らずといったのは、神を認めたのか認めなか
ったのか、これについても深い論争がありますが、現在では孔子はもともと天の
力を信じ、天の命令を大事にした思想家ですが、怪・力・乱・神を完全に否定・
排除したのではなく、関係ないことには触れたくなかったのだと解釈されていま
す。そして特に神について、後の中国の学者・範祖禹(はんそう)が「則有其神
、無其誠則無其神」(即ちその神あり、その誠なければ即ちその神無し)といっ
て、孔子の神についての態度は、本当に敬う神があると思わなければ神はないの
だと考えていたのだろうと解釈しています。こうした学問上の検討はともかく、
円了先生は、この「誠」の意味を取って、ご自分の格言をつくられたのではない
でしょうか。円了先生は厚く沸教を信じておられましたが、一般に人々が言う神
の存在を否定していたわけではないのですが、孔子のいうようにむやみやたらに
神信心するのではなく、自分にしっかりした信念があれば、それが自分の助けに
なると、それが自分の助けになると警告されていたのだと思います。
 少しわかりにくい面があったかと思いますが、円了先生の知識の豊富さには何
時も敬服するばかりです。

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<裂地の選定>

東洋大学初代学長 井上圓了先生 一行書の修復

お軸は本紙とそれを飾る裂地が一体となった芸術と考え、裂地の取り合わせをする際に、書の意味を深く理解し、最もふさわしいと思われる裂地を選ぶよう心掛けています。

大  縁 :西陣正絹緞子「立木草花」紋

       総縁の裂地は お客様にお選びいた東洋大学カラーに近い色 の西陣正

       絹緞子の「立木草花」紋です。

一文字 :西陣正絹合金襴「格子目登龍」紋

       中国より伝来した思想に魔除け 厄除けの願が込められたものを身につ

       ける風習が現在でもあります。その中でも最強と言われる物の一つに龍

       があります。本紙の大意から連想し、 圓了先生の建てられた 哲学堂

        ら、六角形の格子目の中に登龍がいる「格子目登龍」紋 を本紙に一番

       近い一文字に選びました。

<総柄合わせ>

東洋大学初代学長 井上圓了先生 一行書の修復

赤丸で囲ってある部分をご覧ください。

  ・写真上部が天と柱の切り継ぎ部分です。

  ・写真下部は地と柱の切り継ぎ部分です。

綺麗に柄を4か所とも合わせています、これが『 総柄合わせ 』です。

床の間にお掛けいただき、妥協を許さない仕立てのすばらしさと、新たな作品の輝きを感じていただければ、幸甚に存じます。

御本紙と切り継ぐ一文字金襴の柄が真一文字に通るように留意し、裂地を裏打ち、裁断し御本紙と切り継いでいます。

お仕立は、大縁の天・地・柱の柄を全て合わせる“総柄合わせ”です。総柄合わせをするためには手間と裂地のロスが沢山出てきます。しかし、こうして仕立てた掛け軸は、 反物の柄が等間隔に縦と横が一直線に綺麗に柄が並びお軸の品格を高めます

  

東洋大学初代学長 井上圓了先生 一行書の修復

≪お客様の声≫ 

 

縁あって私が「掛軸」を所蔵することになり修復をお願いいたしました。

とてもきれいにすっきりと仕立てて頂き、心より感謝申し上げます。

ありがとうございました。

        安来市安来町 車野 悦郎

        東洋大学OB

 

 

平成 25 11 11

 

 

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